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737MAX墜落原因とされるMCASはなぜ導入された?なぜ解除できなかった?

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エチオピア航空の737MAX型機墜落事故から一週間ほど経ちました。

回収された事故機の飛行記録がフランスによって解析されている最中ですが、先日当局から「去年発生したライオン・エア同型機の墜落事故と明確な関係性がある」と発表がありました。

また、管制塔と事故機の交信記録の内容から、事故機が異常な高速で飛行していたということが分かったといいます。

 

これらの事実から、ライオン・エア・エチオピア航空の両事故は「迎角センサー異常による操縦特性向上システム(MCAS、事実上の失速防止システム)の誤作動が原因」という説がほぼ確定という状況です。

 

では、なぜボーイングはこのMCASという新機能を搭載したのでしょうか。

今回は737MAX型機にMCASが搭載された理由について詳しくまとめました。

 

旧モデルからの設計変更

737MAXは、旧モデルである737NG(New Generation)シリーズを踏襲しつつも、さらなる燃費向上を目指して計画されたシリーズです。

 

具体的な737NGからの変更点は、

  1. ウイングレット(翼端)の改良
  2. エンジンの大型化
  3. MCASの導入

となります。

 

この変更点のうち2点目と3点目が、“737MAX型機の一連の墜落事故に関係しているのではないか”と考えられています。

 

エンジン大型化の理由と設計変更

 

エンジン大型化

737MAXシリーズは、旧737NGシリーズと比べてエンジンが大型化しています。

エンジン大型化の目的は、燃費の改善です。

 

私たちが目にする飛行機のエンジンは、前から見ると大きなファンが見えますね。

ここから空気を取り込んで燃料と混ぜて燃焼させ、これを排気することで推力を生むというのが一般的な旅客機のエンジンです。

 

ただし、ファンで取り込んだ空気をすべて燃焼させているわけではありません。

取り込んだ空気の多くは、燃焼されずそのままスルーされるようになっているのです。

 

実は取り込んだ空気を全部燃焼させるより、一部の空気だけを燃焼させつつ多くの空気をそのままスルーさせてエンジンの後部で混ぜ合わせると、とても効率よく大きな推力を得られるのです。

 

ファンから取り込んだ空気のうち「燃焼させる空気」と「そのままスルーさせる空気」の比率をバイパス比といいますが、一般にこのバイパス比が高いほど燃費が良くなります。

 

そのバイパス比を高める方法の一つとして、“エンジンのファンを大型化する”という手があります。737MAX型機はバイパス比を高め燃費を向上させるべく、エンジンを大型化させたわけです。

 

エンジン大型化に伴う設計変更

従来の設計のままただエンジンを大きくすればいいという話でもありません。

エンジンが大きくなれば当然機体の重量バランスが変わります。

 

飛行機は非常に繊細な重量バランスの元設計されており、前後どちらかにバランスが傾くと燃費が悪くなるばかりか、飛行の危険性まで考えられます。

 

というわけで、737MAXはエンジンの大型化に伴って設計を変更し、機体重量バランスを調整しました。

しかし、737MAXはこうした設計変更による重量バランス調整を受けた後でもなお「重心が機体後部側にあり、機首が上がりやすい」状態だといいます。

 

実はこの“機首が上がりやすい”という737MAXの機体特性を修正するため、後述するMCASの搭載がなされたのです。

 

MCASが導入された理由

737MAXは、エンジン大型化と設計変更により、「後ろ重心で機首が上がりやすい」という機体特性を持っています。

 

機首が上がった状態を続けると空気抵抗が増す上にスピードも落ちるので、燃費は悪くなるなど飛行に悪影響が出ます。

これだけならまだいいですが、問題は離陸時・着陸時などの不安定な状態での失速です。

 

離陸時はエンジン全開で機首を大きく上げ上昇しますが、737MAXは機体特性により上昇する角度が付きすぎてしまう可能性があります。すると当然墜落の危険性が考えられます。

着陸時はエンジンも絞り機首もあげてスピードを落としていますから、ここでも機首が大きく上がってしまうと失速・墜落の危険性が考えられます。

 

ボーイングはこういった機体特性が招く可能性のある危険に対応すべく、この機体特性を修正し最適なバランスで飛行できるように「操縦特性向上システム(MCAS/Maneuvering Characteristics Augmentation System)」を導入したのでしょう。

 

このシステムは、あまりにも機首が上がりすぎている場合迎角が大きすぎる場合など異常時に発動する(とされている)もので異常を感知したら自動的に翼を操作し機首を下げる動きをする・・・といいます。

事実上の“失速防止システム”ですね。

離陸上昇時の機体の傾きを誤認?

 

ここで一度、ライオン・エアとエチオピア航空の事故に戻ってみます。

ライオン・エアとエチオピア航空の墜落ではどちらも、離陸直後に上昇と下降を繰り返したのち、最後はかなり加速した状態で墜落しているとされています。

 

この現象は、

  1. 飛行機が離陸し上昇していくとき、MCASが「異常な角度」だと誤認
  2. MCASが異常を修正すべく、機首下げ方向に翼を操作
  3. パイロットは離陸上昇中になぜか機首が下がったため、操縦桿を引いて上昇方向に操作
  4. 2と3を繰り返す(→上昇下降の繰り返し)
  5. 最終的にパイロットの上昇操作が追い付かず、MCASによる機首下げで墜落

という一連の流れがあったからと考えられています。

 

また、最後加速した状態で墜落したのは、パイロットがエンジン推力を上げることで揚力を得て機首を上げる方法を試したからともいわれています。

 

MCASの解除はできなかった?

現在最有力の「MCASの誤動作による機首下げ・墜落」説ですが、“MCASは解除できなかったのか?またはMCASが異常をきたしたの対応策はなかったのか?”という疑問が浮かんできます。

 

前回の記事でもまとめましたが、どうやらボーイングはこのシステムをマニュアルに明記しておらず、解除方法や異常時の対応などがパイロットらに知られていなかった可能性が指摘されています。

737MAXはやっぱり欠陥アリ?墜落受け米当局がボーイングに改修指示

 

もちろんこれが事実ならそれはそれで問題なのですが、もう一つ疑問が残ります。

 

ボーイング社はこれまで、コンピュータの自動操縦や制御行動を「パイロット側がオーバーライド(上書き)」できるプログラムを組む、というスタンスを取り続けてきました。

 

例えばコンピュータによる自動操縦システムが右旋回をしているとき、パイロットが左旋回側に操縦桿を倒すと自動操縦システムの操作を上書きし、パイロットの操作が優先されます。(ソフトプロテクションといいます。)

※ちなみに、ボーイング社のライバルであるエアバス社は逆に、自動操縦がONの状態であればパイロットのオーバーライドを受け付けないプログラムになっています(ハードプロテクション)。自動操縦を切りさえすれば手動操作が可能です。

 

今回のMCASも、ボーイングのスタンスで行けばパイロットがオーバーライドできたはずなのですが・・・。

どうやら、このMCASはなぜかオーバーライドできない仕様になっていたようですね。

 

事故原因の詳細解明と、ボーイングの説明が待たれます。

 

追記:ボーイングのソフト改良が実装(2019/3/24)

3月24日、ボーイングが737MAXのMCASシステムのソフトが改善したことがわかりました。

記事内容を見ると、ボーイングはMCASシステムの操作とパイロットの操作が異なったとき、パイロット操作を優先するように変更したそうです。

 

ここから、同機事故2件の事故原因はセンサー異常に起因するMCASの誤作動でまず間違いないとわかりました。ボーイングの設定ミスが明るみにでた形です。

 

本文でも触れましたが、そもそもMCASは737MAXの不安定な機体バランスを(半ば無理やり)修正するような目的で搭載されています。

MCASがこれまでシステム優先になっていたのはおそらく機体バランス維持を第一としていたからでしょうが、それで墜落してしまっては元も子もないですね・・・。

 

737MAXの設計上の不安定さを隠すためにもMCASの存在を明記していなかったかもしれませんね。

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